こんにちは、ベース講師の高橋和明(@KAZUAKI_virgiL)です。
問い合わせフォームから質問を頂きました。
Question
「五度圏の効果的な使い方を教えてください!」
「音楽理論」と聞くと全身が痒くなる系ベーシストの皆さん、ようこそ。
今回の記事は、音楽理論の中枢「五度圏(サークルオブフィフス)」の使い方についてです。
とはいえ、五度圏ってあまりに奥が深いうえに非常に難しく。
簡単には説明できない悪魔の代物なんです…。
そこで今回は、 ベーシストの目線から見て
- 取っ付きやすくて
- すぐ覚えられて
- すぐに使える
ベーシスト向けの五度圏の使い方
ベーシストの目線から見て五度圏が最も真価を発揮するのは、即興のアレンジやアドリブ演奏のときです。
「今この場面で使える音を割り出す」というような用途に特化しているものだと思います。
実戦の中で使えるテクニックをいくつか紹介します!
1.平行調の割り出し
円の外側と内側の音程は平行調の関係にあります。これが分かると何ができるかというと…。
▶平行調とは? ベーシストのための指板で覚える平行調
アドリブ界の救世主「マイナーペンタトニックスケール」をメジャー系の曲でも自由に使えるようになるんです!
たとえば、KeyがCの曲の場合。
内側にあるAmが平行調です。
つまり、Key=Cの曲のソロはAマイナーのペンタトニックスケールでゴリ押しすることができるんですね!
▶ブルースを一発で弾けるようになる裏技!マイナーペンタトニックスケールについて
みんな大好き!
汎用性最強のマイナーペンタ!
平行調の逆引きも可能で、Am上ではCメジャー系のスケールが扱えます。
これは、通常のコード進行上でも同じように使用可能です。
たとえばFmの小節の上では、A♭のスケールを使って演奏することができます。
内側のコード上では外側のコードが、
外側のコードの上では内側のコードが使える!
外側のコードの上では内側のコードが使える!
ありきたりな演奏に一捻り加えたいとき。
苦手な調にぶち当たってしまったとき。
そんなときは平行調のスケールを使ってみましょう!
2.ベースラインのフィルを作る
基準音の左右にある音は、どんな場面でも使える音!
例えば、コードがDの小節上でのお話。
この五度圏の表では、基準の音から見て
- 左の枠にはIV度上の音
※反時計回り側 - 右の枠にはV度上の音
※時計回り側
このIV度とV度の音程というのは非常に便利な音価で「どのタイミングで混ぜても当たり障りのない音」なんです。
メジャー系・マイナー系、どちらのコードの上で鳴らしても不協和音にならない音です!
Dにルート弾きにテキトーなタイミングでGやAの音を混ぜるだけで、簡単なフィルを組むことができるようになるんです。
便利ですね!
模範演奏では前半はD、後半はDmのコード上で同じフレーズを弾いています。
どちらのコード上で鳴らしても、ぶつからない音になっていますね!
これができるようになるだけで、淡々と同じ音を刻み続ける「ルート弾きonlyベーシスト」から卒業できます!
五度圏では隣同士の音はとっても仲良し!
基準音の左右の音は、フレーズ中にいつでも混ぜることができる!
基準音の左右の音は、フレーズ中にいつでも混ぜることができる!
3.コードの割り出し
基準音の
左隣りにはサブドミナント。
右隣にはドミナント。
隣同士ネタで、もうひとつ。
「初対面でも演奏できる!ベーシストのための初心者向けセッション講座!」の記事で解説した、3コードブルースのお話です。
次の項目で、それぞれ分解して説明しますね!
ちょっとややこしいけど、音楽理論を語る上では必須の知識を分かりやすく紹介します!
トニック(Tonic)
基準音のことを、音楽理論では「トニック」と呼びます。
曲の調(Key)のI度にあたる音で、全てを支配する要になる音程のことです。
Key=Aの曲の基準音はAですね!
サブドミナント(SubDominant)
基準音トニックの左隣にあるIV度上の音のことを「サブドミナント」と言います。
曲のキーのIV度にあたる音程で「トニックかドミナントに戻りたい!」という性格の響きを持っています。
なんだか優柔不断ですね(笑)
ドミナントについては次の項目へ!
サブドミナントからトニック・ドミナントに移ると「ふぅ、安心♪」というイメージを持たせることができます!
逆にサブドミナントからサブドミナントへと続くと「次の音は何かな」「まだまだこの曲は続くな」というイメージになります。
逆にサブドミナントからサブドミナントへと続くと「次の音は何かな」「まだまだこの曲は続くな」というイメージになります。
ドミナント(Dominant)
トニックの右隣にあるV度上の音のことを「ドミナント」と呼びます。
KeyのV度にあたるコードです。
サブドミナントちゃん以上にトニック大好きさんで「早くトニックに移動したい!」という強い特性を持っています。
ドミナントからトニックに流れると「終わり!着地!安心!」というイメージを与えることができます。
例えばKey=Cの「おじぎ」のフレーズ。
「気をつけ!」はトニック、
「礼!」はドミナント、
「直れ!」はトニックです。
「礼!」はドミナント、
「直れ!」はトニックです。
「礼」から「直れ」に行くと、
「はい、終わり!」感を感じられると思います。
これがドミナントの特性です!
3コードブルースの実例
以上の知識を踏まえた上で、もう一度五度圏の図を見てみましょう。
基準音の両隣のサブドミナント・ドミナントが分かれば、3コードブルースをどんなキーでも演奏することができます!
トニック4小節
↓
サブドミナント2小節
↓
トニック2小節
↓
ドミナント1小節
↓
サブドミナント1小節
↓
トニック1小節
↓
ドミナント1小節
細かく分解すると、こんな感じの構成に。
ブルースについては「初対面でも演奏できる!ベーシストのための初心者向けセッション講座!」の記事を参考にしてみてください。
3コードブルースは即興セッションのための全世界共通言語です!
ちょっと上級編
せっかくなので、少しかっこいい五度圏の使い方も紹介します!
使用できる場面が限定される内容なので、雑学感覚で読んでいただければと思います。
1.裏コードを導き出す
円の対角線上に位置するコードは裏コード。
例えば、基準音がFの場合。
円の反対側にあるBは「裏コード」と呼ばれる音価になります。
これがジャズの世界のコードアナライズやリハーモナイズに非常に便利なんです!
裏コードが使える場面
裏コードが使えるのは、「○7」という表記のコードの場面です。
今回の例だと、「F7」ですね。
それでね。
「○7」という表記のコードは、裏コードの「♭II7」に置換することができるんです。
F7というコードが使われる1番定番のKeyはB♭です。
なので、この先はKey=B♭で仮定して進めていきます。
ちんぷんかんぷん☆な方は、「理論派ベーシスト育成計画 Lv.4 指板を使ってダイアトニックコードを理解しよう」を参考にしてみてください!
どうしてF7を使うキーがB♭なのか、分かるようになるはずです!
なので、この先はKey=B♭で仮定して進めていきます。
ちんぷんかんぷん☆な方は、「理論派ベーシスト育成計画 Lv.4 指板を使ってダイアトニックコードを理解しよう」を参考にしてみてください!
どうしてF7を使うキーがB♭なのか、分かるようになるはずです!
裏コードの実例
例えば。
どこにでもありがちな「ツー・ファイブ・ワン」の典型的なコード進行。
これをですね、裏コードを使うことによって
こんな感じで一捻り加えたコード進行に置き換えることができるんです。
Key=B♭におけるBは♭II度の音価にあたります。
ベースの指板を思い浮かべてみましょう。
ルート音がC→B→B♭と半音ずつ降下していて、とってもスムーズですよね!
セッションの場で「こやつめ、やりおる…!」と思わせたいあなた!
ぜひ裏コードで勝負を仕掛けてみてください!
まとめ
他にも五度圏を使うことで、
楽譜の調合の数から曲のキーを割り出したり、
セカンダリー・ドミナントを求めたり。
演奏中に自分の弾いている音が正しいのかを確認するときにも有効です!
極めれば極めるほど便利なサークル・オブ・フィフス。
たくさん音楽理論を勉強して、使いこなせるようになりましょう!
理論派ベーシスト育成計画
BASS NOTE特集: 理論派ベーシスト育成計画