こんにちは、ベース講師の高橋和明(@KAZUAKI_virgiL)です。
本日紹介するのは通したけでベースが上手くなる魔法の青い箱EBS MULTI COMP。
通称《マルコン》です。
スレッショルド・レシオ・アタック・リリースの設定を駆使した奥行きの表現とか、そういう作曲家としてコンプレッサーのお話をし出すとキリがないので。
今回はベーシスト目線でのお話です。
ベーシストがコンプを使う理由とは?
極論を言ってしまえば「お手軽に上手く聞こえるから」です。
コンプが「必要不可欠な必需品か」と問われれば決してそんなことはなく。
どちらかと言えば「あったら便利」程度の存在です。
なので、そんなに身構えずにこの項目を読んで頂けたら嬉しいです!
「じゃあ、どうしてコンプ論争は終わらないの?」ベーシストはコンプレッサーの話題を出すと止まらなくなります。
必需品ではないのに、それは何故なのか。
答えは「通すだけでそれ相応の素晴らしい効果が得られるから」でしょう。
ディストーションやコーラスなどのエフェクターに比べると一見地味なコンプレッサーですが、その効果は確かなもの。
音を圧縮して音量バランスを均一にし、結果として「音の粒が揃う」とんでもないエフェクターなのです。
その他にも音圧を稼げるとかサスティンが得やすくなるとか、コンプレッサーには様々なメリットがいっぱいです。
スラップが上手く聞こえる!とかね。
逆に言うと、コンプレッサーに頼ったままプレイを続けるといつまで経っても自分の指先で音粒をコントロールできない下手くそベーシストになってしまいます。
コンプを強くかけすぎると、微妙なニュアンスも圧縮されて死んでしまいます。つまり表情の無い演奏になってしまうのです。
ペッコペコに潰した音がウケる場合もあるので、圧縮したサウンドと原音とのバランスが非常に重要になってきます。
などなど、長々と語ってみましたが。
世に出ているベーシストのほとんどがコンプレッサーを使用しているでしょう。
自分ではコンプレッサーを使っていないつもりでも、PA卓のほうで勝手にかけてくれている場合もあります。
CDの音源などにも、まず間違いなくコンプレッサーが通されています。
小難しいことは考えず、まずその効果を体感していただけるとコンプの重要性がよくわかるのではないでしょうか。
EBSについて
MULTI COMPの説明の前に、販売元のEBS社について軽く説明させて下さい。
正式名称≪EBS PROFESSIONAL BASS EQUIPMENT≫。
1988年にスウェーデンで
ベースプレーヤーのために本当に必要な機器を設計し、提供して行こう
という思いの元に創業された、ベーシストのベーシストによるベーシストのための機材ブランドです。
そんなベース特化のメーカーが作ったベース専用のコンプレッサー。
それがMULTI COMPなんですね。
マルチコンプについて
ちょっと知識をかじったベーシストなら、その名を知らぬ者はいない!
定番中の定番、それがEBS MULTI COMPです。
あまりにも有名、定番なのでベース用のマルチエフェクターなどにもモデリングされて搭載されていることが多いです。
僕が愛用しているZOOM MS-60BにもM COMPという名前で入っています。
液晶画面に表示される絵の見た目まで、しっかり再現されています。
コンプ反対派だった僕のベースの師匠も、マルコンだけは認めていました。
僕の憧れ、あっちゃんこと長谷川淳さん (@atsushi_dokudon)の足元にも MULTI COMPの姿が確認できます。
押入れを探したら、箱もきちんと保管してありました!
初心者から上級者まで、全てのベーシストにおすすめできるコンプレッサーです。
ちなみに、僕が学生時代に初めて買ったベース用のコンパクトエフェクターがこちらのMULTICOMPでした。
コントロールノブは「コンプのかかり具合」と「音量」の2つだけ。
シンプルだからこそ直感的。音作りを失敗しようが無い、無駄を削ぎ落とした洗練された設計になっています。
側面のボタンを押すと入力レベルに合わせてPassiveとActiveを切り替えることができます。
パッシブ、アクティブ、どちらのベースにも対応することができます。
マルコンの前に他のエフェクターを噛ませている場合はActiveを選択しましょう。
参考数値:
Nominal Input Level: -10dB or -4dB
(説明書より)
3種類のモードについて
中央のMODEスイッチについての解説です。
MODEは以下の3種類。
- TUBESIM
- MB
- NOMAL
TUBESIM(チューブシミュレーション)モード
マルコンの存在意義。
艶のある倍音を付加することで、真空管コンプのサウンドを再現できます。
あくまでベース本来の原音を殺さず、気持ちよく太い音に仕上げてくれます。
『通すだけで上手く聞こえる』とか、『踏むだけで音が太くなる』なんて言われているのは、このモードのサウンドです。
この音が欲しくてマルコンを購入する方が大多数だと思います。
▼真空管を搭載したコンプの例
MB(マルチバンドモード)
背面のカバーを外すことで高音域、低音域それぞれのコンプのかかり具合を調整することができます。
コンプレッサーのスレッショルドを個別に微調整することができます。
可変幅は、工場出荷時の12時から-25dB / +6dB。
“High”と“Low”、それぞれのトリムに対応する周波数(frequency)は、海外のフォーラムなどもかなり漁ってみたのですが発見できず…。
4弦開放が41.2Hz、1弦をスラップした時の金属音が2-4KHzと言われているので、その辺りにかかってくるのかなと勝手に予想。
参考数値:
Bypass Bandwidth +0 / -3 dB 20 – 20k Hz
(説明書より)
一応、公式の記述ではこんな感じになっています。多分本体の話だと思うんですけど…参考までに。
NOMAL(ノーマル)モード
全3モードの中で一番パコパコ具合が出てくるモードかな、と思っています。
TUBESIMモードに比べて、タイトで引き締まった硬い音になります。
味付けのない、純粋なコンプレッサーらしい音です。
演奏するジャンルやバンドの編成、主張の加減などに合わせてTUBESIMモードと使い分けましょう。
オススメのセッティング
MODEはTUBESIM。
COMP/LIMTのノブは9時から11時。
12時を上回ると演奏の表情が死んでいくので、僕は薄掛けを推薦しています。
GAINのノブは、バイパス時との音量差がなくなる数値に設定します。
ブースター的に扱う場合には、必要に合わせてノブを回しましょう。
このセッティングが、最も自然なかかり具合でMULTICOMPの味を最大限に引き出してくれる設定だと思います。
現行モデルStudio Editionについて
2015年10月から、リニューアル版としてMULTICOMP-SEが発売されています。
「低音落ちが改善された」「かかり具合が強化された」などなど、パワーアップしているそうです。
旧モデルで何一つ不満がなかったので、僕の中のコンプ探しの旅は終わっていました。
なので、SEの存在を全然知らなかったの…(笑)
ただでさえ大満足だったマルチコンプ、どこまで性能を上げてリニューアルされたのか楽しみです。
僕が使用している旧モデルでも 「左IN 右OUT」の初期モデルや、「基盤の種類/印字が違う」モデルなど、出荷時期によって外見やサウンドが少しずつ異なるものが存在しています。
複数のバージョンがあるので、自分のお気に入りのVerを探してみて下さい。