
こんにちは、ベース講師の高橋和明(@KAZUAKI_virgiL)です。
今回のテーマはこちら。
Question
「トライトーンって何ですか?」
Answer
ドミナントの性質を持った減5度の不協和音です!
悪魔の音程(The Devil’s Interval)ってご存知ですか。
不協和音の中でも「最も不快な音」として知られる音程のことです。
音楽の歴史を辿るとなんとバロック期までは音楽家たちに封印されていたという、まさに悪魔の響きを持つ音なんですね。

「悪魔の音階」 や「悪魔の和音」と記されることもあります!
我々のベースの指板にも、当然その悪魔が宿っています。
封印されし悪魔を、無意識に呼び出してしまっていませんか?
今回は、その悪魔の音程「トライトーン」について勉強してみましょう。
トライトーンについて
トライトーンとは
トライトーン(tri-tone)は、別名――- 減5度
- 増4度
- 三全音
基準の音から全音3つぶん離れた位置の音程のことですね。

トライトーンはアボイドノートの一種になります。

指板上の配置で見ると、こんな感じ。

1stと♭5thの関係ですね!
完全5度が半音下がった、減5度の関係です。
完全5度が半音下がった、減5度の関係です。
安定した音階のあとにトライトーンの音程を聞くと「おぉ、不協和音!」と実感できると思います。

この不安定な音程は、ヘヴィメタル界隈では超定番の和音ですね!
トライトーンの機能
トライトーン→Tonicへ
トライトーンの不安定な響きには「トニックの音に戻りたがる」という性質があります。
トニックに戻りたがる性質といえば、ドミナントの機能でした。
つまり、トライトーンにはドミナントに近い特性があるということになります。

トニック・サブドミナント・ドミナントの復習はこちらから!
▶︎ダイアトニックコードを覚えよう
▶︎ダイアトニックコードを覚えよう
7thコードの中のトライトーン

ドミナントに近いというのは、それもそのはずです。
上の画像を見てみてください。
1音足すと、なんと7thコードのコードトーンになりました。
ドミナントのV7コードがトニックに戻りたがる性質があるのは、ドミナントの和音の中にトライトーンがあるからだったんですね!

僕たちは日常的に「封印されし悪魔の音程」を当たり前のように使っているということです!
(♭5)コードの中にもトライトーン

同じくドミナントの機能を持つ(♭5)系コードにも、やはりトライトーンが含まれています。

これでVIIm7(♭5)にドミナントの性質がある理由もはっきり分かりました!
シューベルトの魔王にひそむ悪魔の音程
ここで「トライトーン」の興味深い知識をひとつ。
シューベルトの「魔王(Erlkönig)」ってあるじゃないですか。
小中学校の音楽の時間にやった

「おとーさーーん!おとーさーーん! きこーえなーいのー!!!」

デデデ デデデ デデデ デデデ♪
Dem Vater grauset’s, er reitet geschwind,これが魔王のドイツ語の最後の歌詞になります。
Er hält in dem Armen das ächzende Kind,
Erreicht den Hof mit Müh und Not;
In seinen Armen das Kind war tot.

「やっとの想いで父親が家にたどり着いたときには、息子は腕の中で死んでいた」という衝撃のラストシーンですね。

そして、これが魔王の楽譜の最後の部分。
[ドイツ語] war tot
[英語] was dead
[日本語] 息耐えぬ
坊やが息絶える直前、 (歌詞)”war”の前にピアノで静かに優しく「じゃ〜ん…」とC#dim7のコードが入ります。

C#dim7というコードを指板上で見てみるとこんな感じ。

なんということでしょう。
トライトーンのバーゲンセールです。
トライトーン全開で不安を聞き手の不安を煽り、最後に「war tot(息絶えぬ)!」ですよ。
息絶えた直後はD7→Gm(マイナーのV-Im)という大円満な解決でフィニッシュです。
なんて美しい音楽の世界!!

「トライトーンはトニックに戻って安定したがる」という性質が教科書のように利用された楽曲ですね!
トライトーンを解決させる半進行について
じゃじゃん。
こちらはG7-Cという典型的なV-I進行なんですけども。

これによって安定したトニックのサウンドに解決することができます。

鍵盤で見ると、こんな感じ。
左右から幅を半音ずつ狭める動きになります。

半音ずつ動くから「半進行」ですね!
コードの動きでとらえるなら、ドミナントモーションの動きと同じです!
コードの動きでとらえるなら、ドミナントモーションの動きと同じです!
ベーシスト用のトライトーンを使ったフレーズ

今回のトライトーンの知識を一番使えるのは、やっぱりコレでしょう。
天下のドミナント・モーションのときに使えるオルタード・スケールです。

「隙あらばオルタード!」でおなじみのオルタードスケールです!

「10分で分かる!ベーシストのためのジャズアドリブ入門講座!」で丸暗記した、こちらのオルタードフレーズ。

トライトーンの知識を持って改めて見てみると、なんと悪魔の音程だらけ。
おまけに残りの音もテンション(不協和音)で構築されています。
オルタードスケールには
「トライトーンでドミナントに戻りたい感を煽って」
↓
「さらにテンションで不安感(トニック行きたい感)を煽りまくって」
↓
「トニックに着地してスッキリ解決!!」
↓
「さらにテンションで不安感(トニック行きたい感)を煽りまくって」
↓
「トニックに着地してスッキリ解決!!」
ベースが単音でトライトーンにあたる音を弾いてあげると、鳴っているコードの音とぶつかって「悪魔の音程」が完成します。
この効果こそが「トニックに向かう7thコードの上でオルタードフレーズが使える」というルールの理由のもとなんです!

「トニックへのジャンブ台要素としてトライトーンを混ぜてあげる」というテクニックを利用してみましょう!
まとめ
悪魔の音程、トライトーン。
しっかりその性格を理解して使ってあげれば、とっても効果的。
封印しておくなんてもったいないです!
解決に向かう隠し味として、ベースラインの中にトライトーンの音を混ぜて使ってみましょう!
この効果こそが「トニックに向かう7thコードの上でオルタードフレーズが使える」というルールの理由のもとなんです!

他のコード楽器に対して不協和音でタックルしていくような気持ちで使ってみましょう!
「不協和音 = 汚い音」ではないので、使える場面ではどんどん狙ってぶつかって行きましょう!